すべての会社は家族経営


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すべての会社は家族経営である。

この事実を無視すると悲劇が訪れる。

会社が実際に、家族で経営されているかどうかは関係ない。会社と家族が、実際にどのような関係にあろうとも、会社における意思決定は、家族からの影響を受けるものだ。

それを無視することは出来ない。

不幸なことに、大半の経営者は、彼らの仕事を家族とは関係ないものと考えている。

夫は妻に言う。

“お前には関係ない。”

と。

しかし、それは真実ではないのだ。

家族と会社は切っても切り離せないものだ。

会社の中で起こることは、家庭の中でも起こる。

・仕事で苛立っていれば、自宅でも苛立っている。
・会社をコントロールできなければ、家庭もコントロールできない。
・会社でお金にトラブルを抱えていれば、家計にもトラブルを抱えている。
・会社でコミュニケーションのトラブルを抱えていれば、家庭でもコミュニケーションにトラブルを抱えている。
・会社でメンバーを信頼していなければ、家族のことも信頼していない。

これらのことによって、あなたは信じられないほど大きい代償を支払っているのだ。


スティーブとペギーという夫妻の話をしよう。

スティーブとペギーは会計の専門学校で出会い、結婚した。

卒業後、2人はそれぞれ別の会計事務所に勤め始めた。

数年も経つと、スティーブは事務所の方針に納得がいかなくなり、自分でビジネスを始めようと考えた。

2人は慎重に話し合った結果、スティーブは自分のビジネスを始め、ペギーはいままでどおり、会計事務所に勤め続けることになった。

最初は順調だった。折からの住宅ブームに伴い、街に引っ越してくる人たちが増え、新しいクライアントの獲得には困らなかった。

1年経つと、スティーブはオフィスマネージャーを雇い、事務作業をしてもらうようになった。さらに、アシスタントの会計士も雇った。

スティーブとペギーは最初の成功を祝った。

クライアントは増え続け、2年目の終わりには、2人のフルタイムスタッフと、2人のパートタイムスタッフがいた。

クライアントとスタッフが増えるにしたがって問題が増えた。特に問題だったのは、多くのクライアントからの支払いが遅れるようになったことだった。

サービスを提供してからお金が振り込まれるまで、90日かかることもあった。

スティーブは、“ビジネスはビジネス”というポリシーを崩さなかった。

“会社でのことをやりくりするのは自分の仕事。ペギーは会計事務所での仕事と息子の面倒を見る。“

と考えていた。

しかし、問題が悪化するにつれ、スティーブはペギーに不満を感じ始めていた。

ペギーは自分の抱えている問題を全く理解してくれない。時に彼は自宅でストレスを当り散らした。

ペギーから会社のことについて、色々聞かれるのが嫌になり、次第に、ペギーが眠っている時間を見計らい、夜遅くに帰宅するようになった。

リビングのソファーで寝て、まだ誰も起きていない時間に出勤するようになった。

同じ頃、会社でも同じようなトラブルが起こり始めた。

クライアントからの支払いが遅れても、スタッフに給料を払わなくてはいけない。

彼はスタッフが思ったように働いてくれないことに苛立っていた。自分がなんとかお金のやり取りをして給料を払っているのに、彼らはそのことに無頓着だった。

会社でもスティーブは、誰も自分のことを理解してくれないことに苛立っていた。

そのうち、スタッフの2人が辞めたいと言い出した。増え続ける仕事にストレスが溜まり、耐えられなくなったのだ。

スティーブは会社を続けるか、止めるかの瀬戸際に立たされるようになった。


このようなケースはあらゆるビジネスで起こりうるものだ。

スティーブは全てを自分でやろうとした。ビジネスを成功させ、想像していた生活を家族にもたらし、彼のプライドを保とうとした。

しかし、そうなる代わりに、彼は孤独になり、想像とは逆のことが実現してしまった。

ビジネスがスタートしたとき、最初に代償を払うのは家族である。スティーブが自分の創ってしまった檻から抜け出すためには、彼自身の弱さを認めなくてはいけない。

彼自身、そして家族に対して、ビジネスのこと、そしてそれをどのように成長させれば良いのかわかっていないことを言わなくてはならないのだ。

もう一度繰り返そう。

全ての会社は家族経営である。

マイケルE. ガーバー

マイケルE. ガーバー

米EMyth創業者、Michael E.Gerber Companies会長。世界No.1のスモールビジネスの権威(米INC誌による)。1977年に世界初のビジネスコーチング会社、マイケル・トーマス・コーポレーションを設立。その後、約40年間にわたって、7万社の中小・スモールビジネスをクライアントに抱える会社に成長させた。「E-Myth革命」や「会社をE-Myth化する」などの言葉が生まれるほど、世界中のスモールビジネスに変革をもたらしてきた。1985年には、初の書籍、「E-Myth(邦題:はじめの一歩を踏み出そう)」を出版。「起業家の視点(職人、マネージャー、起業家という3つの人格)」、「ビジネスのシステム化」、「フランチャイズプロトタイプ」、「ビジネス開発プロセス」などの新しい概念を提唱し、現在につながる、スモールビジネス経営の新しいスタンダードを創った。同書は、16カ国語に翻訳され、700万部以上のベストセラーとなっている。

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