すべてを数値化しよう


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トーマスは地元で手作りのピザ屋を開業していた。開業から3年たち、月によって売り上げの上下はあるものの、そこそこの生活をできるようになっていた。

5月の帳簿をつけていたところ、今月は先月よりもかなり現金が少ないことに気がついた。

確かに今月は来客数が少ないと感じていたが、実際の客数までは数えておらず、彼が知っているのは、”現金が少ない”という事実であった。

来客数が問題だと思った彼は、ピザを買ってくれた人にビールをひとつプレゼントする、というアイデアを思いつき、クーポン券を作った。

クーポン券を地元のニュース誌に掲載し、店頭にも置いた。これで客数は増えるだろうと思っていたが、実際のところ、客数が増え、忙しくなった。ピザ屋は繁盛した。

翌月、売り上げを調べてみると、手元に残った利益は、先月と大差なかった。仕事は忙しくなったが、利益は変わらなかった。

彼は思った。

”どうしてこうなった?”

彼は、クーポンで付けたビールの原価分が、まだカバー出来ていないのだと考え、さらに多くのクーポンを印刷した。

翌月もさらに忙しくなったが、計算してみると、またしても利益はさして増えなかった。

いったい何が悪いのか?

このプロモーションのアイデアは間違っていたのだろうか?

彼は、いわゆる”何を知らないのかを知らない”という状況に陥っていた。

多くのビジネスオーナーは、”自分が知っていることについて”はさらに理解しようとするが、”自分が何を知らないのか?”を知ることには目を向けていない。

スティーブは、”ピザの焼き方”については知っていたが、”どうすれば利益が上がるピザ屋を経営できるか?”については知ろうとしなかった。

自分がそのことについて知らないという事実すら知らなかったのだから当たり前だ。

だから私はこれまで、”スモールビジネス経営者が何を知らないのか?”を伝えることに数十年をかけてきたのだ。

スティーブに欠けていたのは、数値化である。

イノベーションと数値化はセットで考えなくてはいけない。イノベーションがどれだけ成果があったのかを図るのが数値化のひとつの役割である。

クーポン券の配布がどれだけ成果があったのかを測定しなくてはならない。

数値化が正しくなされなければ、フラストレーションを解決することが出来ない。

たとえば、スティーブの例では、

・配布したクーポンの数
・使用されたクーポンの数
・来客数
・クーポンを使用した客一人当たりの売上単価と利益
・クーポンを使用しなかった客一人当たりの売上単価と利益

などを測定する必要がある。

これら目に見える数値の測定は、数値化のもっともベースとなるものである。

これらの基本的な数値を知ることで、”自分が何を知らなかったのか”を知ることが出来る。

何を知らなかったのかを知れば、何を、どれだけイノベーションすれば良いのかがわかる。

事業の開発プロセスはそこから始まる。

マイケルE. ガーバー

マイケルE. ガーバー

米EMyth創業者、Michael E.Gerber Companies会長。世界No.1のスモールビジネスの権威(米INC誌による)。1977年に世界初のビジネスコーチング会社、マイケル・トーマス・コーポレーションを設立。その後、約40年間にわたって、7万社の中小・スモールビジネスをクライアントに抱える会社に成長させた。「E-Myth革命」や「会社をE-Myth化する」などの言葉が生まれるほど、世界中のスモールビジネスに変革をもたらしてきた。1985年には、初の書籍、「E-Myth(邦題:はじめの一歩を踏み出そう)」を出版。「起業家の視点(職人、マネージャー、起業家という3つの人格)」、「ビジネスのシステム化」、「フランチャイズプロトタイプ」、「ビジネス開発プロセス」などの新しい概念を提唱し、現在につながる、スモールビジネス経営の新しいスタンダードを創った。同書は、16カ国語に翻訳され、700万部以上のベストセラーとなっている。

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