顧客を失望させたのはいつ?


「送料無料、古いベッドは引き取ります」

私の子供が成長し、ベッドを新調しなくてはならなくなったときのこと。

もう子供用のベッドでは足がはみ出てしまい、クイーンサイズのベッドが必要になった。私たちはリサーチを行い、手ごろな価格のベッドを売っている店に向かった。

その店の営業担当者は、子供が気に入るベッドを紹介してくれ、「送料無料、古いベッドは引き取ります」と言った。(通常、ベッドのような大きな家具は送料も廃棄するにもお金がかかるものだ)

私たちはそのサービスに魅了され、ベッドを購入することに決めた。配達日は次の金曜日の午後5時。

ベッドを入れやすいようにと、私たちは家の玄関口、そして2階にある子供部屋への続く廊下と階段を片付けた。

当日、約束通り配送トラックがやってきた。ここまでは良い兆候だ。

彼らはまず、マットレスを2階へ運び込んでくれた。階段は窮屈だったが、マットレスを折り曲げることで子供部屋へと運び込むことができた。

次はベッドのフレームだ。彼らは同じように2階へと運び込もうとしたが、狭すぎて運べない。マットレスと異なり、フレームは折りたためないのだ。

10分くらい試行錯誤した末に、階段の手すりを取り外さない限り、フレームを2階に運び込むことは無理だとわかってきた。

彼らはお互いに話し合った後、トラックから領収書と保証書を持ってきた。

なんと、フレームを1階に置いたまま、去っていってしまったのだ!

考えてみれば、彼らはきちんと約束を果たしたのだ。

「送料無料、古いベッドは引き取ります」

たしかにそのとおりだった。

しかし、私たちの気持ちはどうだろう?

彼らが去った後、私たちは物置き場から工具を持ち出し、階段の手すりを外し、隣人の助けを借りて、新しいベッドを2階へ運び込んだのだ。

子供はその作業に疲れてしまい、新しいベッドでぐったりと眠ってしまった。

彼らは約束を守った。しかし、次に私がベッドを必要としたとき、彼らの店に行くだろうか?

いや、行かないだろう。

私は店に苦情の電話をしたか?

いや、しなかった。

彼らと言い争いはしたくないからだ。

私たちはいつも、顧客からの苦情は改善の機会だと伝えている。

しかし、問題は、私にとっては彼らの店のサービスが改善されようがされまいが、どうでも良い、ということだ。

彼らは私に悪い印象を与えたばかりか、改善の機会も失ってしまったのだ。

さて、あなたはどれくらいの頻度で、顧客を失望させているだろうか?

新しい顧客を獲得することに一生懸命になる経営者は多い。魅力的な広告やイメージ戦略については、誰もがエネルギーを注いでいる。

しかし、彼らは集まった顧客に対して、正しく対応する準備が出来ていない。

あなたは集まった顧客を魅了する準備ができているだろうか?

これまで、あなたが体験した、最高の購買体験はどんなものだったかを思い出してみよう。彼らは約束を守ったか?約束を守る以上のことをしたか?

「私の顧客が必要なものを得るために、障害となっているものは何だろう?」

これがイノベーションを行うためにするべき質問である。

この質問の答えが見つかったら、それを提供するためのシステムが必要になる。

顧客が必要とするもの全てを毎回、同じように届けるシステム、それがクライアントフルフィルメントシステムである。

クライアントフルフィルメントシステムは、会社を創るとき、また創り直すときに第一に考えるべきものである。

ドリーミングルームの参加者であれば、マリノサントスがやったことを思い出してほしい。彼らは気が遠くなるほどの長い時間をかけて何をやったか?

クライアントフルフィルメントシステムは主に次の4つのエリアで成り立っている。

・商品設計と戦略:あなたの商品は顧客に何を約束できるのか?

・製造プロセス:最高品質の商品をコストを最適化しながら製造するにはどうするか?

・デリバリープロセス:商品をいかにして届けるか?(ベッドのお店は、このデリバリープロセスで失敗した)

・顧客サービスプロセス:メインの商品を強化するための顧客サービスは何か?世の中のいくつかの卓越した会社は、顧客サービスで差別化をしている。

かつて、シカゴ生まれのシンガーソングライター、スティーブ・グッドマンが、

「もし人生がビデオテープだったら、良かった時代を再生し、悪かった時代は消してしまおう」

と歌ったが、残念ながら人生はビデオテープではない。

私たちはいまこの瞬間に生きており、後から再生しなおすことは出来ない。テイク1しかないのだ。

一度しか接しないかも知れない顧客に、あなたの会社のどんなことを覚えておいて欲しいと思うだろうか?

マイケルE. ガーバー

マイケルE. ガーバー

米EMyth創業者、Michael E.Gerber Companies会長。世界No.1のスモールビジネスの権威(米INC誌による)。1977年に世界初のビジネスコーチング会社、マイケル・トーマス・コーポレーションを設立。その後、約40年間にわたって、7万社の中小・スモールビジネスをクライアントに抱える会社に成長させた。「E-Myth革命」や「会社をE-Myth化する」などの言葉が生まれるほど、世界中のスモールビジネスに変革をもたらしてきた。1985年には、初の書籍、「E-Myth(邦題:はじめの一歩を踏み出そう)」を出版。「起業家の視点(職人、マネージャー、起業家という3つの人格)」、「ビジネスのシステム化」、「フランチャイズプロトタイプ」、「ビジネス開発プロセス」などの新しい概念を提唱し、現在につながる、スモールビジネス経営の新しいスタンダードを創った。同書は、16カ国語に翻訳され、700万部以上のベストセラーとなっている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。