優れた経営者が持つ「判別力」


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私は経営者に、物事を区別することがいかに大切かを伝えてきた。物事に区別をつけ、優先順位をつける能力は、欠かせないものである。

ビジネスを始めたころ、起業家はすべての機会に対して「YES」と言いがちである。顧客に「YES」と言い、社員に「YES」と言い、アイデアや計画に「YES」と言う。

すべてに「YES」と言うことは、すべてに「NO」と言っているのと同じである。やることが増えすぎ、会社はフォーカスを失う。会社のアイデンティティが失われる。商品やサービスの質が下がる。物事をやり遂げる能力も下がる。

何かに対して「NO」ということは、ほかの何かに対して「YES」と言うに等しいことを理解しよう。もし「NO」といえないならば、本来「YES」というべきことに「YES」と言えていない可能性があるのだ。

優れた経営者は、「YES」と言うべきなのは、それが会社の強みをさらに強化し、顧客に対する価値をさらに高めるときだけだと知っている。

 

「NO」と言うことは対立を引き起こし、「YES」ということは、つながりをもたらすと考えられている。

何かの機会に対して、「NO」ということ、または部下からの要求に「NO」ということは、リーダーにとって、苦痛になる。

しかし、「YES」は別の種類の対立も引き起こすことを知っておこう。自分の中に対立、様々な矛盾を引き起こすのだ。

かねてから言っているように、“ビジネスとは、あなたの反映“である。だからあなたの中で対立が起これば、ビジネスの中で対立が起こる。

複数の矛盾するアイデアや戦略が生まれたり、時間のバランスが取れなくなったり、責任の所在が不明瞭になり、管理職同士の対立が生まれる。自社が目指すブランドと実態が対立する。

かつて、私の会社のクライアントは、長い時間を経て、「NO」と言うことを学んだと言っていた。

“自社に合わない顧客に「NO」と言い、自社に合わない採用候補者に「NO」と言い、大して重要ではないことに「NO」と言うことによって、目標にフォーカスできるようになりました”

私は彼に聞いた。

“なぜこれまで「NO」と言えなかったのか?”

“嫌われるのが怖かったからだと思います。また、それによって、何かを失うのではないかと思っていました。しかし、いまでは、「NO」と言わないことによって、逆にそのような事態が引き起こされてしまうことが理解できました。“

私は彼の気持ちがとてもよくわかる。だから彼の勇気を賞賛したい。

「NO」と言う勇気を持つことによって、本当に大切なことに「YES」と言えるのだ。

数ヵ月後、彼からまた報告が来たので、最後にご紹介しておこう。

“「NO」というとても簡単な言葉を覚えたことによって私は以前より社員から信頼されるようになりました。また、自社を顧客にどう表現したらよいのかも焦点が定まり、ブランドに統一感が出来ました。いまでは自社の戦略的目標に一直線に向かっている感じがしています”

マイケルE. ガーバー

マイケルE. ガーバー

米EMyth創業者、Michael E.Gerber Companies会長。世界No.1のスモールビジネスの権威(米INC誌による)。1977年に世界初のビジネスコーチング会社、マイケル・トーマス・コーポレーションを設立。その後、約40年間にわたって、7万社の中小・スモールビジネスをクライアントに抱える会社に成長させた。「E-Myth革命」や「会社をE-Myth化する」などの言葉が生まれるほど、世界中のスモールビジネスに変革をもたらしてきた。1985年には、初の書籍、「E-Myth(邦題:はじめの一歩を踏み出そう)」を出版。「起業家の視点(職人、マネージャー、起業家という3つの人格)」、「ビジネスのシステム化」、「フランチャイズプロトタイプ」、「ビジネス開発プロセス」などの新しい概念を提唱し、現在につながる、スモールビジネス経営の新しいスタンダードを創った。同書は、16カ国語に翻訳され、700万部以上のベストセラーとなっている。

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