サービスを商品化しよう – Basecamp(37signals)の例


前回記事(中小企業経営者が会社を売却するには)の続きで、ジョン・ウィローの話をご紹介します。

※ジョンは元々、マーケティングリサーチの会社を経営していましたが、あるきっかけで会社売却を目指すことにしました。その後、実際に売却に成功し、いまは会社売却/M&Aプロとして活躍。中小企業を高く売却するための方法論を確立しました。

今日の内容は、会社を売れる状態にするためには、サービスを商品化したほうが良い、というものです。

以下からどうぞご覧ください。


大半のスモールビジネスはサービス業である。彼らが会社を売れる状態にするには、サービスを“商品化”しなくてはいけない。

サービス型のビジネスは、いろいろな意味で、予測がしにくいものだ。プロジェクト単位で受注単価が異なり、大口の案件を取れた年は良いが、そうでなければ業績が悪化する。また、プロジェクト管理や予算の見積もりに経験が必要であり、熟練のスタッフに依存しがちになる。多くの場合、その熟練のスタッフというのが経営者自身である。

こういった予測可能性の低さは、会社を買う側からすると厄介な問題になる。もし、あなたが会社を売るつもりがなくても、同じ悩みを抱えることになるだろう。

一方、サービスと異なり、商品は価格と効果が明確である。何をいくらで得られるのかが明確であるために、顧客からみても投資がしやすくなる。見積もりが来るのを待つ必要もない。

サービス型から商品型へシフトした例として、37シグナルズをご紹介したい。

ジェイソン・フリードは、37シグナルズ社をウェブデザインの会社としてスタートした。彼は生計を立てるには十分な商いをしていたが、仕事自体は満足できるものではなかった。

ウェブデザインの仕事は、プロジェクト単位の仕事であり、数ヶ月の作業を終えるとそれをクライアントに引き渡す。ほとんどの場合、クライアントがそこに手を入れるため、自分たちが作ったものがそのまま日の目を見ることは少なかった。

とはいうものの同社は成功していた。プロジェクトが大きく、複雑になるにつれ、フリードと他の創業メンバーは、仕事や人を管理するためのソフトウェアが必要だと感じ始めた。いろいろなツールを探したが、結局、シンプルなプロジェクト管理のシステムを自作した。

その後、面白いことが起きた。クライアントが、彼らのシステムを見て、それはどこで買えるのか聞いてきたのだ。彼らはそのシステムを商品化して売り出せるのではと考えた。そして、システムを洗練させ、Basecampと名付けた。

basecamp
https://basecamp.com/

1年後、Basecampの利益はウェブデザインの利益を超えるようになっていた。彼らはウェブデザインというサービス型のビジネスを辞め、商品を売るビジネスへと変化したのだ。いまでは、Basecampはその分野で最も有名なソフトウェアのひとつとなっている。

フリードは会社を売るつもりはないようだが、私が彼にインタビューしたとき、こう言った。

“コンサルティングビジネスの場合、大きなクライアントの案件を断るわけにはいかない。彼らはあなたにしてほしいことを指示するでしょう。ひとつのプロジェクトで600万円払ってくれるクライアントがいれば、あなたは彼らに自由を奪われてしまいます。

いまは自分で自分をコントロールしています。大きなクライアントから大きな小切手をもらうためではなく、何万社もいるお客さんのために経営の意思決定をしているのです。”

37シグナルズの場合、顧客はソフトウェアを使うために毎月少ない金額を払い続ける。そのため、フリードは将来売上げを予測できる。そしてそれが非常に多くの顧客からの売上げであり、安定しているため、彼らはサービス業を辞める決断ができたのだ。

また、Basecampをリリースする前から、7年間運営していた人気ブログがあった。そのため、ブログが強力なマーケティングツールになったのである。

37シグナルズがウェブデザインの仕事を辞めることが出来るまでの顧客を集めるには1年がかかった。その日のことをフリードは次のように語っている。

“自分たちの運命を自分たちで決められる、とわかった瞬間はとてもうれしかったです。もうクライアントに頭を下げてひれ伏す必要がなくなったのです。”

私の場合もフリードと同じように、会社をサービス業から商品を売るビジネスへと変化させた。

37シグナルズの場合は、ウェブデザインから全く異なる分野であるプロジェクト管理ツールへと変化したが、私の場合は同じ分野でシフトさせた。

それまではプロジェクト単位のマーケティングリサーチを請け負うサービスだったが、そこから継続課金型の商品へと変化させたのだ。

継続課金型のビジネスへとシフトしている途中、私は何度もプロジェクト案件を持ちかけられた。中には大型の案件もあり、それを受注したい、という誘惑に駆られた。しかし、そこで我慢し、どんな顧客に対しても、継続課金の商品を提供した。それが大きな要因となって、私は会社を売却することができた。

最初に言ったとおり、サービスを商品化することで、予測可能性が生まれる。大半の場合、それは経営者にも顧客もメリットをもたらしてくれる。


次回に続きます。

サービス業の会社を売却・事業承継可能にするには:
http://blog.entre-s.com/314

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。

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