コアバリュー(基本的価値観)を基盤とする経営


コア・バリュー(基本的価値観)シェアード・バリュー(共有価値観)という言葉が最近、盛んに言われています。

これらは概念としてはかなり昔からあったものですが、最近、特に注目され始めたのは、ザッポスなどの有名企業が積極的にコアバリューに基づく経営を推進しているからかも知れません。

“自分がお客様に接しているのと同じように、社員にもお客様に接してほしい“

と思っている経営者の方は多いでしょう。

“社長不在”で経営を行うには、これは必須のことと言えます。

そして、接客マニュアルなどを整える、という話になるのですが、マニュアルでカバーできる部分には常に限界がある上、マニュアル化すればするほど、形式的な接客になりがちということにもなります。

そこで登場するのが、価値観に基づく経営です。

原則として、社内のみんなが同じ価値観に基づいて活動していればしているほど、細かいマニュアルやルールで社員の行動を規定する必要がなくなります。

たとえば、ザッポスのコールセンターには、トークスクリプト(電話対応の原稿)はありません。これはコア・バリューに基づく経営がしっかりと行われているからです。そのため、誰が対応しても、電話をかけてきたお客様に同じような感情を与えることができます。

スターバックスの接客がマニュアル的に感じられないのも同じ理由だといえるでしょう。

(ただし、これは彼らの社内にマニュアルがまったく存在しないということではありません。むしろ、その他のことについては、ほかの企業よりも圧倒的にしっかりとしたマニュアルと教育制度があります)

では、どうやって価値観に基づく経営を実践するのか?

米国の中小企業向けに行われた調査によると、88%のビジネスオーナーは、価値観に基づく経営の重要性を理解しているものの、日々の意思決定や顧客対応にその価値観が反映されている、と答えたオーナーはそのうちの44%しかいませんでした。

ザッポスなどを真似て、“誠実さ”や“チャレンジ精神”などの標語を掲げている会社もあると思いますが、実際のところ、それがどれだけ経営者や社員の本心に根付いているのか?

学べばすぐに実践できるマーケティングやセールスのテクニックとは異なり、コア・バリューやシェアード・バリューは、概念を知ったからといって、すぐに社内で活かすことができるわけではありません。

ということで、今回は、中小企業でコア・バリューに基づく経営を実践するための、最初のステップをご紹介します。

1.経営者個人の価値観を明確化する
ガーバーが常々言っているとおり、ビジネスとはそのオーナーの人生の反映です。これは特にコアバリューに関して当てはまります。会社のコアバリューは、何よりまず、ビジネスオーナーの個人的な価値観に基づいている必要があります。

先ほどのザッポスのCEOトニー・シェイやヴァージングループの創業者リチャード・ブランソンなどを見れば、彼らの個人的な価値観が会社に反映されていることがすぐにわかります。

なので、最初のステップは、経営者が自分としっかりと向き合い、自分の人生で大切にしているものは何か、5-10個程度の言葉にすることです。

2.それぞれの価値観の定義をする
たとえば、“一貫性”といったとき、それはいったい何を意味するのか?自分の中での定義を明確にし、文章にします。

3.行動を振り返る
次に、それをすぐに社内に告知するのではなく、それがどのように自分の人間関係、仕事、ビジョンに反映されているのかを振り返ってみます。つまり、本当に自分はその価値観で生きているのかを評価します。

4.個人の価値観から会社の価値観へ
ここからのやり方は、会社の規模にもよりますが、基本的に、鍵となる社員や幹部社員には、あなたと同じようにやってもらい、彼らの個人的な価値観を明確にします。そして、彼らと話し合い、最終的に5-10個程度の会社のコア・バリューを定義していきます。

5. 話し合いながら必要であれば修正していく
社員と話し合いながら、日々の仕事のやり方が、決めたコア・バリューに沿っているのか、または沿っていないのかを検討し、言葉を固めていきます。

6.オフィシャルな書類にする
最終的にコアバリューが定まったら、それを社員ハンドブックや入社時のオリエンテーション資料など、会社のオフィシャルな書類に盛り込んでいきます。

7. コアバリューに基づいて生きる
経営者自身がコアバリューのとおりに生きているのか?“社長は背中で語る”ものであり、自らがコアバリューの源泉となる必要があります。

コアバリューはブランド戦略、人材採用、企業文化、顧客サービスなど、社内のあらゆる活動に元になるものです。大切なものですが、焦って創るようなものでもありません。

まず、経営者自身の人生をじっくりと振り返ることからはじめてみてはどうでしょうか。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。

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