「戦略的仕組み化」と「戦術的仕組み化」


うちの会社は既にマニュアルが整備されているので、仕組み化が出来ている、という経営者の方もいますが、そう思っているのは本人だけ、というケースもあります。

そもそも仕組み化とは何でしょう?

世の中に、仕組み化をテーマにした書籍やセミナーなどはたくさんあります。実はそのほとんどは、「戦術的仕組み化」の話に終始しています。

戦術的仕組み化とは、その名のとおり、戦術的な仕事をマニュアル化したり、ITツールを使ったりして、業務の効率化を目指すことです。たとえば、電話の応対マニュアル、掃除のチェックリスト、クレーム対応のマニュアルなどが当てはまります。

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大半の人は仕組み化とはこの「戦術的仕組み化」のことを指すのだと思っていますが、それだけでは、経営者の望むような会社を創ることはできません。

ここで実例をご紹介します。

ある経営者が、エステサロンの会社とサプリメント通販の会社という2社を経営していました。

彼女は、成長の見込めるサプリメント通販に特化するため、2店舗あるエステサロンを売却することにしました。売却を決めたときからスタッフに頼んで業務の内容をマニュアル化していきました。

施術の方法はもちろん、接遇の方法、ホームページの更新方法、電話の受け答え方法などなど。1年半も経つとマニュアル類も整い、彼女がサロンに行く時間も徐々に減っていきました。

実際のところ、彼女は実務作業をほとんどしておらず、自分ではない人が経営をしても、同じように売り上げが立つと確信していました。

それからほどなく、同業他社に会社を売却することが出来ました。彼女は会社が完全に仕組み化されていると思っていました。

しかし、現実はそうではありませんでした。売却当時、一番売り上げを上げていたスタッフが会社を辞めてしまうと、売り上げはまもなく激減し、半年後には半分になってしまいました。

彼女はしかたなく、売却先からの相談に乗り続けることになってしまい、しばらくの間、思うようにサプリメントの通販会社に集中することが出来ませんでした。

実際のところ、彼女が行ったのは、戦術的な仕事のマニュアル化だけだったのです。

たとえば、優秀な人材をどうやって見極めるか、スタッフが辞めないような職場をどうやって創るか、自社のブランドをどのように定義するか、など経営者として考える仕事(戦略的な仕事)は依然として彼女の勘と経験に依存していました。

だから、スタッフが辞めたとき、売上が下がってきたとき、次なる一手を考えることが出来なかったのです。

これは何も会社を売却する予定がなくても同じことです。

真に自律型の組織を作るには、会社のステップアップに合わせて、最初は戦術的な仕事の仕組み化、そして戦略的な仕事の仕組み化へと進み、徐々にマネージャーや管理職へと仕事を委任していくことが必要となります。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。

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