ビジネスモデルのバージョンアップ


前回の記事で、

【脱】職人型ビジネスモデル

をテーマにさせていただきました。

今回も引き続き、ビジネスモデルの話をしたいと思います。

簡単に前回のおさらいをしておくと、

職人型ビジネスから起業家型ビジネスへ変革するには、

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「職人の視点」 ⇒ 「起業家の視点」

「職人型ビジネスモデル」 ⇒ 「起業家型ビジネスモデル」

「職人型組織」 ⇒ 「起業家型組織」
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というように変化させていくことが求められます。

また、職人型ビジネスモデルの兆候として次の点を挙げさせていただきました。

•拡張していくイメージが付かない
•出口戦略がない
•何かに依存している
•オファー(顧客への提案内容)をしばらく変えていない
•魅力的な市場を選んでいない
•売るのに高いスキルがいる
•生産性が低い

前回の内容はこちらのブログにアップしておりますので、見逃した方はこちらからご覧ください。

【脱】職人型ビジネスモデル
http://blog.entre-s.com/579

今日は「ビジネスモデルそのもの」について考えてみたいと思います。

 

■優れたビジネスモデルは次の質問に答える

「ビジネスモデル」という言葉が今ほど有名になったのは、おそらく書籍「ビジネスモデルジェネレーション(http://amzn.to/2covmxu)」が出版されてからではないでしょうか。

私もこの書籍を何度も読み、ワークショップに参加し、仲間とともに、共著者のイヴ・ピニョール氏にインタビューしたこともあります。

この書籍は、ビジネスモデルとは何か?を網羅的に示したという点で評価されるべきものだと思います。

ただ、この書籍を読むだけでは、有能なファシリテーターやアドバイザーがいない限り、優れたビジネスモデルを生み出すのは相当無理があると思います。

そこで、ここでは、もう少し簡潔にビジネスモデルを考えてみます。

優れたビジネスモデルは少なくとも次の質問に明確な答えを出せるものだと言えます。

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•対象市場はどこか?

•あなたはどんな問題を解決しようとしているのか?

•その問題をどのようにして、他社よりうまく、安く、早く解決するか?

•利益モデルは何か?

•競争優位性をいかにして維持するか?

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正直なところ、ほとんどの中小・スモールビジネスでは、上記の質問に明確な答えは持っていないと思います。(持っていたら既にワールドクラスの会社になっているかもしれません)

しかし、いずれにしろ、これらの質問を考え続けることが、優れたビジネスモデルを発明するためのプロセスになるはずです。

 

■ビジネスモデルにもライフサイクルがある

ビジネスモデルについて、もう一つ重要なことがあります。

それは商品や会社にライフサイクルがあるように、ビジネスモデルにもライフサイクルがあるということです。

マイケルE.ガーバーは書籍の中で次のように書いています。

”どのような会社であっても、社会が大きく変化して、存在意義を失い、顧客の要望にこたえられなくなるときは来るものだ。それを予め予想して、「新しい会社」ー起業家としての第二の人生の始まりーの準備を始めなければならない。”

ほとんどの読者の方は見逃していると思いますが、これはガーバーのメッセージの中でも特に重要なものです。

ガーバーの中心的なメッセージは、起業家精神(アントレプレナーシップ)です。

私が社名にアントレプレナーという言葉を入れたのはそのためです。

そして、アントレプレナーの仕事とは、ここで言っている「新しい会社」を発明することなのです。

これは何も新しい会社を登記するということではなく、いまの事業を運営しつつ、時代の変化に対応した新しい事業を発明することを意味しています。

ガーバーがいつも成功例として挙げていたマクドナルドですら、いまの社会での存在意義を問われているのはご存知のとおりです。

これは時流とともに、ビジネスモデルのライフサイクルが進んできたためという理由があると思います。

 

■ビジネスモデルのバージョンアップ

ビジネスモデルのライフサイクルをうまく管理していくためには、ビジネスモデルのバージョンアップという考え方が必要になります。

たとえば、Windowsはバージョン1から始まり、いまでは10までバージョンアップしています。そして、そのたびごとに操作性を含めて、大きな変化を加えています。

ビジネスモデルも同じように、時流や市場環境の変化に合わせてバージョンアップさせていく必要があります。

ガーバーは次のようにも言っています。

”現状を維持するためにわずかばかりの変化を加えるだけじゃなくて、会社を全く新しい場所に持っていくような根本的な変化を考えるべきなんだ。ワールドクラスの会社を創るためには、過去の成功した部分を残しながらも、決して聖域を創るべきではない。”

ここで言っている、

「会社を全く新しい場所に持っていくような根本的な変化」

というのが、ビジネスモデルのバージョンアップといえます。

これは新商品を出すとか、店舗を増やすとか、価格を変えるとか、そういうレベルの変化ではありません。

利益の取り方、競争優位性、さらには必要ならば対象市場まで変えていくことを指しています。

実際、ガーバーが1977年に創業した会社では、私が知る限り、過去に少なくとも4回、ビジネスモデルの大きなバージョンアップを繰り返しています。

2000年代に入ってからは2回ほどバージョンアップしているので、時代の変化のスピードが早まるとともに、バージョンアップのスピードも早まっているのだろうと思います。

そして、重要なのは、ビジネスモデルがバージョンアップしても、創業時の「世界中の中小・スモールビジネスを変革させる」という思想は、創業から40年たった今でも変わっていないことです。

思想はブラさずに、思想実現のための手段であるビジネスモデルは時代とともにバージョンアップさせていく、

だからこそ、いまでも業界内で権威性を持った存在になっているのです。

他にもいま有名になっているワールドクラスの会社の歴史を紐解いてみると、その多くが、途中でビジネスモデルをバージョンアップさせています。

そして、バージョンアップを繰り返したビジネスモデルが、ある時、市場とうまくマッチし、爆発的な成長を遂げ、職人型ビジネスから起業家型ビジネスへと変革していっています。

さて、今日はビジネスモデルのライフサイクルとバージョンアップという話をしましたが、長くなってきたので、続きは次回にさせていただきます。

次回は、ビジネスモデルのバージョンアップをするために検討すべき点をご紹介したいと思います。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。