職人技ではなく、構造で売る


前回、前々回と

【脱】職人型ビジネスモデル

というテーマでメルマガをお届けしています。

見逃した方はこちらからご覧ください。

前々回:【脱】職人型ビジネスモデル
http://blog.entre-s.com/579

前回:ビジネスモデルのバージョンアップ
http://blog.entre-s.com/583

今日はその続きをお届けします。

 

■どうバージョンアップさせていくか?

ビジネスモデルをバージョンアップするには、何をどう考えていけばよいのか?

ビジネスモデルを創るのは、かなり創造的な作業で、この通りやれば絶対に凄いビジネスモデルを創れる、という理論はないと言っていいでしょう。

そこが組織の話と少し異なるところだと思います。

組織論の場合、研究の歴史も長いですし、問題と解決策のパターンがある程度決まっています。

一方、ビジネスモデルは、「ビジネスモデルジェネレーション」のようなフレームワークはあるものの、基本的にはあれこれ試行錯誤が求められます。

ただし、職人型ビジネスモデルから脱却する、というテーマに絞ってみると、ある程度考えるべきことが決まってきます。

そこで今回、ガーバーのメッセージをかみ砕き、

「既存のビジネスモデルをバージョンアップし、【脱】職人型ビジネスモデルを目指すための方法」

を次のとおり体系化させていただきました。

 

【ステップ1.環境認識】

いま世の中で何が起こっているのか?を正しく認識すること。

ガーバーは次のように言っています。

”勝手な自己判断をせずに、事実を観察することです。すべての事実をあるがままに見ることです。そうすることで、そこから新しいものを創造することができます。”

簡単なようですが、職人型ビジネスの場合、これが意外と難しかったりします。自分の仕事は○○だ、という固定化されたバイアスがかかってしまっているためです。

たとえば、技術の進化は、IT業界のみならず、全業界に影響を与えます。

最近起業した私の知人は、一見、ITと関係なさそうな農業という分野で革命を起こそうとしています。

彼は全く農業のバックグラウンドはありませんが、いま農業用のロボットを造っています。

そのロボットを使うと、収穫時期を自動認識できるそうです。

実現すれば、農家にとても大きな影響があります。

これは海外では既に実現化されている技術だそうで、それを日本でもやってみようということなのです。

このように今何が起こっているのか?それが自分のビジネスにどう影響するのか?

を認識することが第一歩となります。

 

【ステップ2.対象市場】

対象市場の選定は、ビジネスモデルのバージョンアップにおいてとても大事です。

対象市場とは、要するに、どんなフラストレーションを持った人たちが相手か?ということです。

とあるベンチャーキャピタリストは、”スタートアップで最も重要なのは市場の選択である。正しい市場を選べば、創業メンバーがよほどの無能でない限り、事業は拡張していく。”というような発言をしていました。

もちろん、持続的に成長していくためには正しい市場を選ぶだけでは不十分ですが、市場選びが間違っているとスタートで躓きます。

 

【ステップ3.提供価値】

対象市場に対して、どんな価値を提供していくか?つまり、フラストレーションをどう解決するか?

たとえば、英会話スクールの場合の提供価値としては、

・安く学べる
・とにかくTOEICの点数が上がる
・海外で働くために実践的で本格的な英語が身につく
・ネイティブが一対一でみっちり教えてくれる

などなどいくつかあります。

先ほどの対象市場にいるフラストレーションを抱えた人たちが、どんな価値を求めているのか?

対象市場と提供価値のマッチングが肝になります。

 

【ステップ4.利益モデル】

提供価値を具体的にどのようなサービスや商品で提供し、利益を上げていくか?

英会話スクールで例を挙げるならば、英会話を学ぶ方法としては、

Eラーニング、教室、スカイプレッスン、留学、などなど多々あります。

これらの商品やサービスを、”どんな価格帯で”、”どう組み合わせて”、価値を提供していくか?

が利益モデルです。

利益モデルを考えるときに重要なのが、

”高いスキルを持つ営業マンがいなくても商品が売れる”

ということです。

スモールビジネスの場合、トップセールスマンが社長自身ということがほとんどです。

その理由は、社長が一番人脈があり、商品に情熱があるから、ということもありますが、

そもそも高度な営業スキルが必要な利益モデルになっている、という理由もあります。

まず、その利益モデルを変えなければ、職人型ビジネスから抜け出すのが難しいです。

 

【ステップ5.生産性向上】

どのようにして、より少ない労力と時間で利益を上げるか?

生産性向上は、仕事術的な個人技でもある程度可能です。

たとえば、ゴミ収集のビジネスを考えてみます。

ゴミ収集の生産性を上げるには、運転技術の向上や、収集作業のスピードアップなど、個人技で出来ることもあります。

ただし、これでは限界があり、人に依存しがちです。

一方、ヨーロッパのあるゴミ収集会社では、ゴミ収集車のルートを、ある法則に沿って変更することで、85%のコストダウンという劇的な改善が見られたそうです。

85%というのは個人技で絶対に成し得ないレベルの改善です。

これは極端な例でしたが、ともかく職人型ビジネスモデルから脱却するには、個人技ではなく、仕組みで生産性向上を目指すことが求められます。

 

【ステップ6.競合優位性】

競合他社と比べて何が優れているのか?
そして、その優位性をいかにして維持するか?

特に重要なのが、優位性をいかにして維持するか?という部分です。

一時的な競合優位性は、先行者利益や商品性能、または「他社よりも頑張る」といったような精神論でも可能かも知れません。

しかし、先行者利益はいずれ無くなり、

商品はより優れたものがどんどん出てきて、

頑張り続ければ疲弊してしまいます。

そこで、職人技ではなく、他社が参入しようと思わない、または参入しようと思っても参入できない、といったような構造を創り出すことが必要になってきます。

市場を独占しているような企業は、そのような構造をとても巧みに創り上げてます。

 

以上、「既存のビジネスモデルをバージョンアップし、【脱】職人型ビジネスモデルを目指すための方法」として6つのステップをご紹介させていただきました。

それぞれのステップは、特に目新しい項目ではないと思いますが、これらを一貫性を持って組み合わせていくところに妙があります。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。