【総括】職人型ビジネス脱却に必要なこと


2016年もいよいよ大晦日になりました。

ガーバーから学んだことを日本の経営者の皆様にお伝えし、フィードバックをいただき、ということを繰り返してきた中で、ここ数日、職人型ビジネスから起業家型ビジネスに変革するために必要なこと、重要なことを個人的にまとめています。

そこで本日は、その中から8つのことを共有させていただきたいと思います。

 

1.人生のゴール

「はじめの一歩を踏み出そう」にも書かれていますが、ビジネスはビジネスオーナーやそれに関わる人の人生を幸せに導くための乗り物です。

今年は特に人生のゴールから逆算してビジネスを考えることの重要性を痛感しました。

というのも、高齢によってこれから働ける年数に限りがあり、いまの会社をどうにかしなければならない人や病気で長い間、会社を空けなくてはいけない人が、私のごく身近にいて、その現実を目の当たりにしたからです。

絶対的な事実として、私たちはいつの日か、いまのビジネスを離れることになります。

どういう状態で、その時を迎えるのか?

それがビジネスオーナーの人生にとって、極めて大切です。

長年、そのビジネスのために人生を捧げたにもかかわらず、大した資産や伝説を残せないのは残念な話です。

だからこそ、「自分がずっと働き続けるという以外の選択肢」を真剣に捉えることが必須になってきます。

いまのビジネスでどんな伝説や資産を創るのか?

その視点でビジネスを捉え始めれば、毎日の過ごし方が変わってくるはずです。

 

2.明確で絞り込まれたドリームとビジョン

ここで言う(ガーバーが言う)ドリームとは「偉大な結果」、ビジョンは「ビジネスの最終形態」です。

ドリームとビジョンが明確であればあるほど、会社が成長するのが早くなります。

ドリームが明確であるということは、そのビジネスが生み出す結果が明確だということです。

すなわち、顧客にとって、そのビジネスが自分に何をしてくれるのか?が明らかであるため魅力的に映ります(=売上が上がる)。

ビジョンが明確であるということは、そのビジネスが目指す姿が明確だということです。

すなわち、ビジネスオーナーや社員が日々の仕事の意思決定が早くなり、生産性が上がります。

また、ドリームとビジョンが絞り込まれているということは、その会社がユニークな存在であるということです。

これは上記の「1」にもつながりますが、そういう会社であれば第三者に会社を売却する際にも価値が高まります。

ビジョンの大切さについては、私の古巣、マイクロソフト創業者のビルゲイツが、10年以上前に次のように言っています。

”マイクロソフトの成功の秘訣を教えてほしいとよくいわれる。社員二人の零細企業から出発して、従業員1万7000人、年間売り上げ60億ドル以上の会社をどうやって育て上げたのか?その秘密は?もちろん、シンプルな答えなどない。運も味方してくれたけれど、いちばん重要だったのは、私達が持っていた最初のビジョンだったと思う。”
by ビルゲイツ

ここでビルゲイツがいうビジョンは、一般的に言われるビジョンよりも大きな意味合いを含んでいると思います。

パソコンやインターネットが普及していく中で、世の中がどのように変わっていくのか?
そしてその中で自社はどのようなビジネスをしていくべきか?
という時代背景を考慮に入れたうえでのビジョンです。

あなたの会社のドリームとビジョンは何か?

それは十分に明確で絞り込まれているか?

というのをぜひ考えてみてください。

※ドリームとビジョンの話はガーバーのドリーミングルームにご参加されていないとピンと来ないかも知れません。いまはドリーミングルームを開催していませんが、来年以降、新しいバージョンのドリーミングルームがスタートしますのでそちらをお待ちいただければと思います。

 

3.絞り込まれた商品やサービス

商品やサービスが絞り込まれていればいるほど、仕組み化は容易になります。

前にもメルマガでご紹介しましたが、売るものが増えれば増えるほど、仕組み化が難しくなります。

たとえば、コンビニエンスストアの店員さんを見てみればわかります。

昔、コンビニで売っているものは日用品くらいでした。

そのうち、コンビニで公共料金の支払いができるようになりました。

さらに、荷物の受け取りや発送ができるようになり、

最近ではカフェの機能も担うようになってきました。

このように、コンビニのサービスが充実していくにつれ、店員さんがやらなくてはいけない仕事の種類が増えます。

となると、当然、新人の店員さんをトレーニングするには、より多くの時間と手間がかかるようになります。

マニュアルを作るにしても、提供するサービスが増える分だけボリュームが増えていきます。

詰まる所、提供するサービスが増えれば増えるほど、仕組み化が難しくなっていくというわけです。

仕組み化を行う前に、そもそも、その商品やサービスが本当に必要なのか?と自問し、やることを絞り込むことで業務がシンプルになっていきます。

 

4.職人技への過信から脱却

「これは自分にしかできない」という考えを捨てることです。

日本は必要以上に職人技が重宝されていると思います。

質の高い職人技があれば、商品やサービスの質が高まりますが、それを間違った方向に過信してしまうと、逆にビジネス衰退の原因になってしまいます。

職人技への過信が間違った方向に働くと、

第一に、技の伝承/移転が難しくなります。

第二に、顧客にとっての価値よりも、自分たちの職人技を示すことに主眼を置きがちになります。
(日本の家電メーカーがアジア諸国に負けてしまっているのもここに一因があると思います)

私は毎年、伊勢神宮にお参りに行っていますが、ご存知の通り、伊勢神宮は20年に一度、式年遷宮が行われます。

それによって、長い年月を経ても、建物が清浄に保たれています。

式年遷宮が20年毎に行われる理由は諸説ありますが、大工の技術を継承するためとも言われています。

若いときには先輩の技術を見て盗み、20年後には、今度は自分が若い大工に技術を伝えるのです。

このような仕組みがあることによって、伊勢神宮の建物は保たれ、日本は歴史と神話がつながる世界唯一の国とも評されています。

宮大工の職人技が伝承/移転できなければ、伊勢神宮はこれほど長く続いていません。

伊勢神宮の場合、伊勢神宮を清浄に維持するという目的があり、そのための仕組みとして式年遷宮、つまり職人技の伝承/移転の仕組みがあります。

自社に果たして、そのような職人技の伝承/移転を行う仕組みがあるでしょうか?

 
5.古い会社と新しい会社

職人型ビジネス脱却以前の問題として、そのビジネスが属する業界全体が衰退している(斜陽産業)ケースがあります。

そのような斜陽産業にいる場合、いわゆる生き残り戦略が取りざたされ、ユニークな方法で生き残り続けている会社がメディアで取り上げられたりします。

しかし、そのようなケースはごく稀であり、大半の会社は、業界の衰退とともに衰退し、廃業していくことになります。

マイケルE.ガーバー著の「起業家精神に火をつけろ」の中に、次のようなフレーズがあります。

”どのような会社であっても、社会が大きく変化して、存在意義を失い、顧客の要望にこたえられなくなるときは来るものだ。それを予め予想して、「新しい会社」ー起業家としての第二の人生の始まりーの準備を始めなければならない。”

さらに、

「古い会社」=既存のビジネス

「新しい会社」=これから創るビジネス

のバランスを取りながら進まなくてはならないと書いてあります。

つまり、業界全体が衰退/停滞しており、それによって会社が行き詰っている場合には、聖域なき変革を起こしていくことが求められるということです。

この場合の「新しい会社」というのは、全く畑違いの新規事業(ユニクロが野菜を売る等)をやれ、ということではありません。

既存のビジネスの中から、世の中の課題を見つけ、それを他とは異なる方法で解決するビジネスを創るということです。

 

6.最初に仕組み化すること

これも何度かメルマガでご紹介していますが、職人型ビジネス脱却のために、第一に仕組み化する部分は、クライアント・フルフィルメントです。

巷には、自動で集客するとか、集客の仕組みを作るなどのノウハウが溢れてます。

たしかに、全く集客が出来ていないのであれば話にならないのですが、ある程度の顧客基盤があり、売上が立っている場合には、フルフィルメントが肝になってきます。

以下、ガーバーの文章を引用させていただきます。

——————————————————
最初のステップは、クライアント・フルフィルメント・システムを作ることだ。

クライアント・フルフィルメントとは、顧客に提供するすべてのものである。医者であれば、顧客が来院してから退院するまでに体験するすべてのことである。

インターネットでものを売っているのであれば、注文が入って、顧客に商品を届けるまでに行うすべてのことである。

何度でも、いつでも、どこでも、誰がやっても同じような結果が出せるようにシステムを設計しよう。

顧客と最初にコンタクトをする時から彼らとの関係性を全てデザインし、デザインしなおす。

クライアント・フルフィルメント・システムは、顧客との約束を守るために設計する。だからあなたは当然、自分のビジネスが顧客に何を約束しているのかを明確に知らなくてはならない。

あなたが信じていようが、信じていなかろうが、少なくともコモディティを売っている会社においては、差別化の肝は、このクライアント・フルフィルメント・システムにある。

だから、最初に考えるのだ。

あなたのビジネスの成否がそれにかかっているかのように、心を込めて設計すること。顧客の感情を満たすように設計すること。あなたがスターバックスやウォルマートを作っているかのように考えよう。


 

7.新規顧客の継続的な獲得

新規顧客の獲得が重要なことは言うまでもないと思います。

しかしながら、多くのスモールビジネスは、意外なほど新規顧客の獲得に時間を割けておらず、既存顧客からの売上に依存しています。

その大半は、フルフィルメントを仕組み化できていないことが原因となっています。

つまり、ビジネスオーナー自身が顧客対応に追われていて、集客に時間を割けていないというわけです。

だからこそ、フルフィルメントの仕組み化がとても重要になってきます。

フルフィルメントの仕組みが出来たら、次は集客/販売です。

世の中には集客/販売のノウハウが溢れています。

それだけ集客/販売に困ってるスモールビジネスオーナーが多いということかも知れません。

私はガーバーと出会う前からインターネットマーケティングの仕事をしていたので、10年以上、自社の、または他社の集客活動に携わってきました。

その中で、新規顧客を継続的に獲得するために、

”集客に使ったコスト以上のリターンを得るための商品/サービスを提供すること”
(顧客獲得コスト < 顧客一人当たりの生涯利益)

というシンプルなルールだけに頼ってきました。

このルールさえ守れば、細かい集客のノウハウに右往左往する必要がなくなります。

「うちは広告は出していないので、集客にお金はかかっていない」

という方もいらっしゃるかも知れません。

しかし、集客には、「無料で集客することはできない」という原則があります。

世の中には、こうすれば安く集客できる、アメブロを使えばタダで見込み顧客が集まる、と謳っているノウハウもあります。

ただ、どんな方法であっても、自分、または社員の人件費がかかっていることを忘れてはなりません。

その人件費を考えたら、お金を出して広告を出したほうが効果的というケースが多々あります。

そのうえで、先に挙げた、

”顧客獲得コスト<顧客一人当たりの生涯利益”

という方程式を成り立たせるわけです。

この方程式を成り立たせるためには、

選択肢1.顧客獲得コストを下げる
選択肢2.顧客一人当たりの生涯利益を上げる

という2つしかありません。

このうち、多くの人が選択肢1を選びます。

つまり、いかに安く顧客を集めるか?ということにフォーカスしがちになります。

これは世の中に”安く集客するためのノウハウ”が溢れているためかも知れません。

しかし、長期的に見れば、選択肢2を目指したほうが成長が見込めます。

なぜならば、単純な話で、顧客獲得コストを下げるのは難しいからです。

たしかに、Facebook、Instagramなど、新しいメディアが登場する時には、極めて安い単価で広告を出すことが出来ますが、徐々に単価が上がります。

インターネット広告の大半は入札形式なので、ライバルが気づいて参入し始めれば、単価も上がるわけです。

であれば、顧客獲得コストは下がらない、という前提に立ったうえで、

「集客にお金をかけてもリターンを得ることが出来るような利益モデル」

を創ったほうが長期的には賢い選択肢と言えます。

そのような利益モデルが出来上がれば、どんなメディアが出てきても対応できるようになりますし、新しい集客ノウハウに右往左往する必要もなくなると思います。

 

8.採用

中小・スモールビジネスにおいては、一人が社内で担う役割が多いので、採用のインパクトは大企業よりもはるかに大きいです。

ガーバーは、「採用活動はマーケティング活動となんら変わりがない」と言っています。

採用活動における企業文化は、マーケティング活動における商品と同じであり、マーケティング活動で理想の顧客像を描くことが重要であるのと同じくらい、採用活動においても理想の社員像を描くことが重要になります。

つまり、採用活動を始める前に、最低限、

・採用候補者にとって、自社の何が魅力に映るのか?

・自社にとって最高の社員像とはどういう人か?(能力/態度)

という質問に対する答えを考えておく必要があります。

この質問は意外と深い質問で、”顧客から見たときの自社の価値”にも直結します。

直近で採用する予定のある方はもちろん、そうでない方もぜひ一度考えてみてください。

ちなみに採用の課題を解決するべく開発中なのが、クラウド型企業文化管理ツール「カルチャーフィット」です。

まだベータ版ですが、ご興味のある方はこちらから内容をご覧ください。
http://lp.culture-study.com/

以上が「職人型ビジネス脱却に必要な8つのこと」になります。

他にも細かいことはたくさんありますが、それは今後のメルマガや講座などでお伝えできればと思います。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。