ワールドクラスの診療所


本日は、ガーバーの未翻訳の書籍に掲載されている実話をご紹介させていただきます。

主人公のサンディ医師は、大半のスモールビジネスと同じような状況にありました。

開業した当初は夢や希望を持っていましたが、仕事に慣れていくと同時に、忙しさに忙殺されて仕事の精度も下がり、顧客の満足度も下がっていきました。

そこからガーバーの思想を基にして診療所を変革した実話になります。

以下からご覧ください。

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サンディ・ブレイク医師は自身の診療所を持っていた。彼のスタッフはマネージャーを含む管理スタッフと4人のアシスタント、2人の研修生、さらにオフィスマネージャーがいた。

多くの人は彼の診療所は成功していると考えていた。彼のスタッフは忙しく、待合室はいっぱいで、彼のスケジュールもいっぱいだった。

もちろん、これらの成功には代償もあった。書類の束が床まであふれ帰り、請求書は遅れて発行され、電話をかければ何分も待たされた。

一方で診療の量は増え続けた。サンディ医師はかつてそうであったような、人々からの尊敬をなくしつつあった。待合室は立って待つくらいのスペースしか空いていなかった。診察室に招かれるまでには、平均して23分も待つ必要があった。

診察室ではアシスタントがあなたの体温と血圧を測り、服を脱ぐように言われる。そして彼らは立ち去ってしまい、あなたはそこに取り残される。どれくらい待たされるのかも知らされずに。

そのうち、サンディ医師かアシスタントがやってきて、急ぎながら、上の空で診察を始める。あなたのカルテと顔をちょっと見ると、医師は“どんな気分ですか?”と聞いてくる。この質問を繰り返しされるのはいらいらするものだ。彼のあなたの状況を無視した対応は、心に残るものだった。それは尊敬の念も欠けていたし、あなたの時間を無駄にするようなものだった。

かつてはそうでなかった。彼の古くからの患者に、初期の頃の様子を尋ねると、サンディ医師の診療所はきれいにペイントされ、魅力的な飾りがあり、キレイで、明るかったと回想した。

当時の穏やかな日々には、スタッフからとても丁寧に扱われ、特別な存在であるように対応がされていた。いまではサンディ医師は忙殺されているようだった。笑顔と日常会話はオフィス機器とビジネスライクな会話にとってかわられた。

このような状況は特別なものではない。非常に良くあることだ。ただし、サンディ医師は”間違った方向に行ってしまっていることを知っている”という点で例外だった。手遅れになる前に何か手を打たなくてはいけないという直感を持っていた。

患者にとってもスタッフにとっても、好まれるような診察を行うには、毎日繰り返される体験を作り直さないといけないと考えた。サンディ医師がそのことに気が付いたとき、すべてが変わった。飛躍への道を理解することが出来るようになった。

彼は仕事をすることと、ビジネスを創り出すことの違いを理解するようになった。”ビジネスの外側から働きかけること”と”ビジネスの中で働くこと”の違いを理解するようになった。

それと同時にマーケティングの力も理解した。診療の中心にあるものとして、彼は患者との約束事を見出した。それは彼の診療に対する視点を変えただけではなく、患者やスタッフの視点も永遠に変えてしまうものだった。

その約束とは次のものである。

“私たちはいつも時間通りに、約束したとおりに行います。もし出来なければ、あなたの訪問に対して対価をお支払いします。

この約束は、患者に対してとても強力なメッセージを暗に含んでいた。

”私たちはとてもひどい間違いをしてきました。あなたとアポイントを取り、それを尊重することができませんでした。それであなたを怒らせたことを知っています。私たちは診療の効率性に妥協し、診療を楽しむ気持ちをなくし、診療に対する活力をなくし、診療の効果に対しても妥協をしました。”

もちろん、サンディ医師を含め、誰もその約束をどのようにして守るのかというアイデアは持ち合わせていなかった。なぜならば、このような職業で、このような約束をした人はこれまで誰もいなかったからだ。

サンディ医師はそのような約束をすることで、診療に対する気持ちを再度奮い立たせようと考えたのだった。彼の患者が誰で、彼らが何を欲しているのか、そこに集中することで、そもそも彼がこの道を志した理由を思い出そうと考えた。

彼は質問をすることによって、患者を知ろうと努力した。彼は患者に質問表を渡して埋めてもらった。彼らはどのような色を好むのか、どのような形が良いのか、それに沿って、彼の診療所を再設計した。

彼はスタッフに彼らのビジネスのやり方について考えるよう伝えた。より責任感を持って、より効率的に行うにはどうしたらよいのかを考えさせた。約束を守るにはどうしたらよいのかを考えさせた。彼は考え方をスタッフに教え込んだ。

単に効率的に行うだけではなく、競合に対して自分たちを際立たせるくらい効果的なやり方が必要であることを理解させた。この目標を達成するにはみんなの注意とコミットメントが必要だった。

また、それは次のような質問を常に考えることを要求させる目標だった。

“ワールドクラスの診療所だったら、私たちはどのように見え、どのように感じ、どのように行動しないといけないだろうか?”

サンディ医師の診療所の変革は驚くべきものだった。彼は診察を自動化する方法を教え、請求などを滞りなく処理する方法を教え、患者ともっと親切に接する方法を教えた。ひとつの約束事に続いて、これまで誰も考えなかったような約束事が次々に作られ、守られるようになった。

彼は次のような質問を自分に問いかけたのだ。これはあなたも自問すべき質問である。

・あなたの患者、顧客を狂ったように連れてくるものとは何か?

・スタッフが責任を持って出すべき結果にも関わらず、それが出来ていない場合、何がそれを難しくしているのだろうか?

・私はどのようにしたら彼らの仕事を、人生を、より簡単に出来るだろうか?

これらの質問に回答すれば、それが問題を解決するというよりも、機会をつかむためのものだとわかるだろう。ひとたび答えを見つけたら、次のように質問しないといけない。

”これらの必要な変化をどれくらいすばやく出来るだろうか?”

サンディ医師は最終的に学んだ。多くの人はマーケティングとプロモーションや広告を同等に扱っているが、実はそうではない。マーケティングを上手く行うということは、あなたの患者や従業員、そしてあなた自身に対して、人生を元気付けると約束することを意味する。

関係性を新しくすると約束するものである。みんなに対して、あなたのことを重要に思っています、と言うためのプロセスにコミットするものである。真のマーケティングとは何かを理解するためには、”あなたの会社全体が販売される商品である”と認識しなくてはならない。

マーケティングとは、言葉や写真やコマーシャルやカタログを意味するものではない。あなたの約束を守るための全体のシステムを意味するのである。”組織がマーケティングをする”のではなく、”組織それ自体がマーケティング”なのである。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。