実話の続き:職人型ビジネスからの脱却


今日は、前回ご紹介したマリノ・サントス物語の後半をお届けします。

前半はこちらから:
http://blog.entre-s.com/736

主人公が職人型ビジネスから起業家型ビジネスへと変革する、非常に示唆深いストーリーです。

前半では主人公のマリノ・サントスがケガをしてしまい、今まで通りの仕事が出来なくなってしまいました。

そして、新しい起業家型ビジネスを模索していきます。

後半では彼らがどんなビジネスを選んだのか、そしてそれをどうスタートさせたのかが明らかになります。

以下からどうぞご覧ください。

 

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マリノ・サントスのキッチンが彼らのオフィスになった。毎晩、彼らはビールを酌み交わしながら状況を報告しあった。

最初、議論は白熱した。各自、他のメンバーが出した結論とは異なる結論を出したがった。しかし徐々に彼らは賢くなり、結果について慎重に考え始めた。議論は徐々に落ち着いてきた。

2年半の間、リサーチや計画に没頭した結果、彼らは遂に決断を下した。

それはシンプルで後から考えてみればまったく複雑ではないものだった。

彼らはキッチンを改築するビジネスを選んだ。そしてそれをスリー・デイズ・キッチンと名づけた。

それは一見すると普通のビジネスであった。特に重要さを感じない、ささいなものだった。

彼らはどんなビジネスをやるかということに、とてもたくさんの努力と時間を費やした。キッチン改築ビジネスをやるという決断をすることに。

それくらいの時間があったら、他の人は何をするだろうか?

MITを卒業する、オリンピックに挑戦する、本を書く、、、

進むべき道を選ぶのに、彼らほど多くの努力と知性と注意を傾けた人を他に知っているだろうか?

ひとつのことを行うために、こんなにも情熱を傾けた人をどれだけ知っているだろうか?

2年半もの間、最初の目的を思い出し続けた人を知っているだろうか?

比類のない意思の力ではないだろうか。

ところで、彼らのビジネスはどこに他と異なる点があるのだろうか?

実際のところ、彼らは最初のキッチンを完成させ、支払いを受けるまで、さらに2年の月日を費やした。

彼らは練習のため、何百ものキッチンを作り上げた。想像できるあらゆる問題に直面し、それらに打ち勝ってきた。

彼らはマリノ・サントスが借りた倉庫で、週末の夜に働いた。そこで彼らはキッチンを作る練習をし、問題点を分析し、議論し、このビジネスで想定されるあらゆることを理解していった。

マリノ・サントスのスタッフは昼間の仕事をしている中で気が付いたキッチンに関する問題点をメモし、それを週末に議論した。

彼らは、キッチンの改築ビジネスに関して言えば、自分たちほど多くの時間を費やし、多くの問題に突き当たり、知性を持ってそれらを解してきた人たちはいないことを確信していた。

彼らはそれをやると決めたのだった。

彼らは世の中の人々が見たこともないような、キッチンの改築システムを作り上げようとしていた。駆け出しの職人でも、そのシステムさえ学べば、完璧に正しく出来上がるのだった。

そして壁、窓、床、キャビネット、ライトなど、キッチンに関するあらゆることについても完璧に、3日以内に改築が完了するようになっていた。そしてそれが保証されていた。

さらに彼らは競合と比べて、劇的にコストを下げる方法を理解していた。もちろん、品質も類を見ないほど良いものだった。彼らが得る利益についても考えられていた。

競合は彼にとっては問題にならなかった。

彼のスタッフは日々の仕事の非効率さ、無駄、能力のなさなどを報告してきた。通常の現場では素材や職人は遅れるのが当たり前だった。

大きな改築工事では、よく新しい発見があり、作業が数時間や数日遅れていた。やっつけ仕事が当たり前で、職人は訓練もされていなかった。利益率は低く、新しい人を訓練する時間もお金も無かった。

他の建築会社はスリー・デイズ・キッチンが上手くいくかどうか見当が付かなかったが、マリノ・サントスと彼のスタッフは確信していた。

彼らはこれまでにないほど働いた。

彼らはやると決めたのだ。

キッチンは他の部屋と異なり、一定の基準に沿って作られている。それぞれのキッチンがユニークな問題点を抱えているわけではなかった。マリノ・サントスとスタッフが発見したのは、ほとんどのキッチンは同じようなもので、いくつかの数えられる程度のバリエーションが存在するだけだった

そのため、彼らのキッチン改築システムは、そのキッチンがどのバリエーションに相当するのかを見極めることが出来れば、3日間で完成することを保証してくれるものだった。

彼らは初心者の職人を使って、彼らのシステムを勉強させた。そしてマリノ・サントスやスタッフが、改築が正確に、スケジュールどおりに行われているかどうか、状況をチェックできるようなマネジメントのシステムを作った。

それから彼らは何度も何度も、それらのプロセスを練習した。全ての問題が解決されるまで。

最初のキッチンに対する対価が支払われた翌日の夜は、彼らにとって特別なものになった。

それは何の滞りも無く完了した。

しかし彼らはずっと前から、そうなるものだと知っていた。彼らはそうなるように計画し、練習していた。当然のことだった。

彼らの顧客は驚いていた。

仕事が約束したとおりに終わったことに対してだけではなく、それをやった職人たちがとても清潔で、礼儀正しかったことに。

顧客はマリノ・サントスに喜びの声を伝えてくれた。仕事が正確なだけではなく、それが自分の仕事を愛している人によって行われたことに。

“こんな良い人たちをどこで見つけたのですか”彼女は聞いた。

“知っていたら良かったのに。”

マリノ・サントスは笑って答えた。


 

以上、いかがだったでしょうか。

この物語には、職人技をいかにして仕組みに変えるか?どのようにしてビジネスを選択するか?などいくつものヒントが隠されています。

ぜひ何度か読み直して、職人型ビジネスから起業家型ビジネスへ変革するためのきっかけを得ていただければと思います。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。