全てのスモールビジネスに欠けているもの


7年前、あるソフトウェア会社の幹部達がやってきました。

私のドリーミングルームに参加したのです。

(※ドリーミングルームは起業家の夢、ビジョン、目的、ミッションを発見するための経営者向けプログラム。)

彼らは既に私の本(「はじめの一歩を踏み出そう」)を読んでいました。

そして、その内容を自社の発展に活用していました。

彼らは全員エンジニアでした。

自分たちでソフトウェアを作っていました。

当時のことを明確に覚えています。

彼らはドリーミングルームに参加しましたが、いまいち腑に落ちていない様子でした。

そのうちの1人が、2日間半のプログラムが始まる前にやってきました。

彼は言いました。

”あなたの本の内容は、私のようなエンジニアにとっては、とても理解できます。
仕事を行う上で、システムを作らなくてはいけないということ、
そして、よりよい方法を探し続けることについては
私もそのとおりだと思います。

しかし、ドリーミングルームの考え方はよく理解していません。

なぜ夢が必要なのでしょうか?”

そこで私は答えました。

”まず2日間半を一緒に過ごしましょう。
既に参加費を支払って、わざわざフェニックス(アリゾナ州)からカリフォルニアまでやって来たのですから。”

私が提案することを心を開いてやってみて、何が起こるのかを見てみましょう。

終了後にもう一回話しましょう。そして、いまあなたが私にした質問の答えを私に教えてください。

夢を見るとはどういうことなのか?という質問の答えを。”

すると彼は理解して席に戻り、他の40人の参加者と一緒にスタートしました。

彼のほかにはマーケティング副社長、財務の副社長、オペレーションの副社長がいました。

ドリーミングルーム終了後にCEOのスコットがやってきて言いました。

”これまでの考え方が吹き飛びました。

もし、あなたが最初に2日間半で何が起こるのか説明していたら、私は信じることが出来なかったでしょう。

完全にビジネスが変わりました。
なぜなら、ビジネスに対する考え方が完全に変わったからです。

私たちはソフトウェア会社だと思っていましたが、そうではなかったのです。
ソフトウェアを売ることが仕事だと思っていました。

しかし、もう私達全員がそうではないことに気がつきました。

私たちには今、夢、ビジョン、目的、ミッションがあります。

まだ、それらが何か、明確に理解していないかも知れませんが、もう今までのようには決してなりません。”

そういって彼らは帰ってきました。

当時、彼らの社員は15人しかいませんでした。7年前です。

いまでは1000人を越えています。

米国でもっとも大きなベンチャーキャピタルから54億円を調達しました。

そして、毎年2倍の成長を続けています。

それもすべて、彼らがソフトウェアを開発するだけが仕事ではないと気がついたからです。

毎日忙しく働き、より優れた職人になることだけが目的ではないと気がついたからです。

彼らの新しい社屋の壁には夢、ビジョン、目的、ミッションが掲げてあります。

私達の夢はこれで、ビジョンはこれで、目的はこれで、ミッションはこれで、というように明文化してあります。

そして社員が毎朝出社すれば、それを見ることになります。

それらは7年前には全く存在していませんでした。

同じことが毎回、全ての人に起こります。

これは素晴らしい体験です。

自分の中で、いままで知らなかった誰かが目覚めるのです。

だからただ働くだけでは駄目なのです。

起業家は目の前の仕事をやり続けるだけではいけません。

本当の起業家はビジネスデザインのマスターです。

デザインし、構築し、成長させる。

またデザインし、構築し、成長させる。

革新を続けるシステムとしてそれを続けるのです。

自分たちのビジネスはいったい何なのか、顧客は誰なのか、どんな社員なのか、それを新しい視点で見直すのです。

それがスティーブ・ジョブズと、毎日忙しく働き続けているだけの経営者の違いです。

彼らは毎日忙しく働き続けているだけで、世界中の人たちに自分のアイデアを届けるということを体験したことがありません。

以前、少しだけ私のビジネスパートナーだった人がいます。

彼は私の本についてこう言いました。

”本は本に過ぎないですよね”

私は言いました。

”しかし「聖書」も本に過ぎないですね。

「戦争と平和」も本ですね。

「孫子の兵法」も本ですね。”

と。

つまり、それらは単なるひとつのアイデアに過ぎないですね。

しかし、マクドナルドもひとつのアイデアから生まれたのです。

アップルもひとつのアイデアから生まれました。
インテルもひとつのアイデアから生まれました。
コンピューターもひとつのアイデアから生まれました。
フォードもひとつのアイデアから生まれました。

どれも単なるひとつのアイデアに過ぎません。

そう、そのアイデアこそが、全てのスモールビジネスに欠けているのです。

自分の持てるものを総動員して追及する価値があると思えるアイデア、

それこそが欠けているのです。

これまでに自分で作ってしまった限界を超えて、

心を開いて、これまでに想像したことのない可能性を追求してください。

あなたの人生はこれまでの体験したことがないところへ到達するでしょう。

自分の人生をこれまで見たことのない新鮮な視点で見たとき、驚嘆することになるでしょう。

それが最初に話した彼らに起こったことです。

彼らは最初に質問しました。

”夢を見るとはどういうことですか?”

それは”あなた自身”についてのことなのです。

物事をこれまでに見たことのない見方で見ることなのです。

※文中のソフトウェア会社とは、アリゾナ州に本社を構えるInfusionsoft社のこと。

マイケルE. ガーバー

マイケルE. ガーバー

米EMyth創業者、Michael E.Gerber Companies会長。世界No.1のスモールビジネスの権威(米INC誌による)。1977年に世界初のビジネスコーチング会社、マイケル・トーマス・コーポレーションを設立。その後、約40年間にわたって、7万社の中小・スモールビジネスをクライアントに抱える会社に成長させた。「E-Myth革命」や「会社をE-Myth化する」などの言葉が生まれるほど、世界中のスモールビジネスに変革をもたらしてきた。1985年には、初の書籍、「E-Myth(邦題:はじめの一歩を踏み出そう)」を出版。「起業家の視点(職人、マネージャー、起業家という3つの人格)」、「ビジネスのシステム化」、「フランチャイズプロトタイプ」、「ビジネス開発プロセス」などの新しい概念を提唱し、現在につながる、スモールビジネス経営の新しいスタンダードを創った。同書は、16カ国語に翻訳され、700万部以上のベストセラーとなっている。