仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」を読み解く その2「起業家の神話」と「3つの人格」


前回(前回の内容はここをクリック)に続いて、 仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」を読み解いていきます。

本日は、「起業家の神話」と「3つの人格」についてです。

 

1.起業家の神話

(起業家熱にうなされる人たちは、必ずと言っていいほど誤った「仮定」を置いてしまうようだ。(中略)致命的な仮定とは、「事業の中心となる専門的な能力があれば、事業を経営する能力は十分に備わっている」ということである。

「起業家の神話」は、既にほとんどの方はご存知だと思いますが、世間一般的な起業家像は、あまりにも美化され過ぎており、大半のスモールビジネス経営者の実情とは程遠い、ということです。

本書のタイトル(E-Myth:Entrepreneur Myth」にもなっている通り、中心的なテーマになります。

そして、大半のスモールビジネスがうまく行かない理由は、起業するほとんどの人が、「致命的な仮定」を信じてしまっていることだと書いてあります。

職人的な仕事を行う能力と事業を経営する能力が別物であることはこのメルマガをご覧いただいている方は良くご存じだと思います。

場合によっては、その業界の門外漢の方がビジネスを成功させるのに適しているケースもあったりします。

業界の門外漢であり、職人的な能力を持っていないために、「起業家的な視点」を持たざるを得ないのです。

たとえば、ガーバーの教えを受けた、連続起業家(シリアルアントレプレナー)のロジャーフォード氏は、完全な門外漢であったペットビジネスに参入し、わずか2年で売却できるビジネスを創りました。いまは同じく門外漢である心臓の医療器具のメーカーの経営に携わっています。

ただし、これは別にスキルを活かして独立してはいけない、ということではありません。

問題は次に登場する、「3つの人格」をコントロール出来るかどうかになります。

 

2.3つの人格

私たちの誰もが、「起業家」と「マネージャー」と「職人」という3つの人格を併せ持っている。そして3つのバランスが取れたときに、驚くような能力を発揮するのである。(中略)しかし残念なことに、私の経験から言えば、起業した人の中で3つの人格をバランス良く備えている人はほとんどいない。

これも既にほとんどの方がご存知のお話かと思います。

たまに、「私は起業家的な人格だから、マネージャー的な人を雇いたい」とおっしゃる方がいますが、これはそういう話ではなく、経営者自身がすべての人格をバランスよくコントロールする必要があります。会社が小さいうちは、どうしても自分で様々なことをこなす必要があるからです。

3つの人格のバランスは、一般的なスモールビジネス経営者が、

起業家10%、マネージャー20%、職人70%

であるのに対し、

起業家33%、マネージャー33%、職人33%

という割合が理想的なバランスとなります。

 

どんな事業を始めれば良いのだろうか?これが本当に起業家的な質問なんだ。

ガーバーは起業家的な人格を表に出すために、まずは「なぜこの事業をやっているのか?」を自問自答すべきだと書いています。

職人型ビジネスの大きな特徴は、起業する際の「事業内容の選択が受身的である」ということです。

つまり、それまで培ってきた専門能力をベースに起業するために、どんな業界や業態に参入するか、どんな利益モデルにするか、どんな顧客を相手にするか、どんな成長の機会があるのか、といったことを考慮せずに起業してしまうということです。

これは本来の起業家の決断とは正反対です。本来の起業家は、まず市場を見て、どこに機会があるのかを見定めて事業を選択します。

そもそも事業自体に革新性がなければ仕組み化しても大して成長できません。

マクドナルドがあれほど世界中に広がったのは、”第一店舗目が既にほかのハンバーガー屋とは圧倒的に一線を画していたから”です。だからこそ、それを仕組み化することで世界中に広がったのです。

昔、経営者の方と一緒にガーバーのところに行った際、その方がこのようなことをガーバーにおっしゃいました。

「うちの業界は全体的に縮小傾向にありますが、私はやり方次第でまだまだ生き残れると思っています」

その時のガーバーのコメントは、

「なぜわざわざ縮小している業界で生き残る必要があるのですか?あなたの貴重な人生の時間を、そのような事業に投資する理由は何ですか?」

というものでした。

その経営者は単に、いままでその業界でやってきたから、という理由だけで、これからもその業界で生き残っていこうと考えていたのです。

もしかすると、その業界の関連市場で、より成長の機会が見込める分野があるかも知れないにも関わらず。

日本人は特に地道にやることに重きを置く傾向があります。それは大事だと思いますが、地道な努力が実を結ぶのは、正しい山を登っている時だけです。まずどの山に登るか?という質問がありきで、その次に、どのようにして登るか?という質問が続きます。

起業もこれと同じようなもので、まずどの事業をやるのか?そして次に、どのようにやるのか(仕組み化するのか)?という順序になります。

 

本日はここまでとなります。

次回は「成長の3つのステージ」と「誰もが経験する成長の壁」をカバーしていきますので楽しみにされていてください。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。