仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう」を読み解く その4「成熟期」


前回から引き続いて、 仕組み化のバイブル「はじめの一歩を踏み出そう(http://amzn.to/1b3OHPG)」を読み解いていきます。

本日は、企業成長3つのステージのうち、いよいよ「成熟期」に入ります。

ここでは重要なコンセプトがいくつか提示されます。

 

成熟企業の創業者は、事業に対して普通とは全く異なる視点を持っていたのである。

これはいつもお伝えしている職人の視点と起業家の視点の違いのお話になります。

本書にはあとから職人の視点と起業家の視点の違いについて書かれていますが、中でも私が決定的に異なる点だと思うのは、起業の出発点です。

職人型ビジネスにおいては、自分の持てる能力やスキルが起業の出発点です。その能力やスキルを求める人がどこかにいるし、将来も必要とされるだろう、という希望的観測で起業します。

一方の起業家型ビジネスにおいては、顧客や世の中が抱える課題が出発点です。その課題を解決するためにどんなビジネスが必要かという考察の元に起業します。

前者は自分を必要としてくれる人を探すところから始まりますが、後者においては既に自社のビジネスを必要とする顧客が存在するので、成長するのも早くなります。

 

 

重要なのは商品やサービス自体ではなく、起業家の視点を持って経営することであり、優れたビジネスモデルをつくることなのである。

「はじめの一歩を踏み出そう」を読むと、どうしても「仕組み化」や「自分がいなくてもうまく行く仕組み」に目が行きがちになりますが、その話の前に、優れたビジネスモデルをつくることが重要である、と書いてあります。

実はこれは原文では、「ビジネスモデルをつくることが重要である」とは書いておらず、そのまま訳すと、「ビジネスがどのように行われるか?が重要である」と書いてあります。

(ちなみに「はじめの一歩・・」は、私たちがガーバー氏と会うはるか前に出版されているので、本書の翻訳や出版には私たちは一切関与していないのです)

最近は日本でもビジネスモデルという言葉が普及しているので、そう書いてあるのだと思いますが、原文を見ると、一般的に言われるビジネスモデルとは少し異なることが分かると思います。

ビジネスモデルと聞くと、利益を上げる画期的な構造を想像してしまいます。

しかし、たとえば、ガーバーの話によく出てくるマクドナルドやスターバックスは昔からある飲食業なのでビジネスモデル的には単純です。

ただ、他の飲食業とは、”やり方”が異なります。

構造自体は一緒でも”やり方”が異なるのです。

その他とは異なるやり方を探すことこそ重要である、と書いてあるわけです。

 

 

事業には基本となる理念も必要だ。その理念にしたがえば、今日どんな仕事をやるべきなのかがはっきりするだろう。そのため事業は、誰にでもわかるような明文化されたルールにしたがって運営されなければならない。

ここで出てくる”理念”という言葉は、いかにも日本的で、”うちの会社は〇〇で社会に貢献します”というような曖昧なものを想像してしまいます。

しかし、これも、原文を見てみると、

”(日々の仕事で活かされる)基準、型や方式、在り方”

となっています。

なので、理念よりも基準と置き換えたほうが分かりやすいかも知れません。

その会社独自の基準に沿って日々の仕事を行うこと。まさに仕組み化そのものと言えます。

 

 

職人タイプの経営者は長期的な展望をもたないまま、目の前の仕事ばかりに気を取られがちである。このタイプの会社では、ある仕事が終わったからといって、次の段階に進めるわけではない。

この一文はさらっと書いていますが、非常に重要だと思います。

起業家型のビジネスにおいては、まず長期的なビジョンがあり、日々の仕事はそのビジョンに近づくために行われます。

しかし、職人型のビジネスでは、ビジョンがないために、日々の仕事を完了させることこそが目標となってしまいます。

そして、次にやってくる仕事も、前回と同じようなタイプの仕事なので、収入は得られるかもしれませんが、ビジネスの根本的な成長につながるようなものではありません。

言ってみれば、あらゆる仕事がルーチン化してしまっているのが職人型ビジネスの典型的な症状と言えます。

そうならないためにも、まず、経営者の人生の目的や価値観から生まれているビジョンが必要となります。

 

 

起業家は、顧客が現在や将来に欲しがるものを探し続けなければならない。

先ほど述べた通り、起業家型のビジネスは顧客の課題を解決することが出発点です。

そして、顧客の課題は時代が変化するとともに変化するので、起業家はいつでもそこにチャンスを見つけることが出来ます。

ガーバーは、”真の起業家は、顧客が自分で気が付くよりもはるかに早く、顧客の課題とその解決策を見つける”と言っています。

これをやったのがスティーブジョブズ(Mac)や、日本で言えば井深大(ウォークマン)などの偉大な起業家です。

彼らは顧客が欲しいとも言っていないものを顧客の目の前に提示し、”そうそうこれが欲しかったんだ”と言わせたのです。

起業家の仕事は、顧客が将来欲しがるものを探すこと、ともいえるかもしれません。

 

 

以上、本日はここまでにさせていただきます。

次回は、「事業のパッケージ化」に進みます。

これも本書の最重要コンセプトのひとつなので楽しみにしていてください。

バックナンバーはこちらから:
その1.http://blog.entre-s.com/821
その2.http://blog.entre-s.com/824
その3.http://blog.entre-s.com/829

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。