「起業家精神に火をつけろ!」を読み解く その6. 優れた起業家はワックスをかける


今日は「8.他者との格闘」「9.起業の目的とは何か?」「10.第一の課題」「11.第二の課題」「12.第三の課題」まで一気にいきます。

 

(引用)目的とするべき目的など存在しない。(中略)スモールビジネスのために働くことをなぜ僕が大切に思っているのか、というきみの質問に対しての唯一の答えは、わからない、ということなんだ。この仕事がとても大切だということはわかっているよ。だから自分でコミットした。でも、コミットした理由はわからないんだよ。この仕事が突然に現れて、とても興味を持った。抵抗し難い魅力があったんだよ。

→よく講演家やコンサルタントは、

”何をやるかより、なぜやるかが大事”

ということを言います。

しかし、実際のところ、なぜこのビジネスをやるのか?を考えて起業した人は少ないと思います。

ほとんどの人は、このガーバーのように、何かがきっかけとなり衝動で起業します。ガーバーは40年以上、スモールビジネスの支援をしていますし、その仕事に情熱を持っていると思います。

しかし、なぜこの仕事が重要なのか?を考え抜いて始めたわけではありません。

引退生活に入ろうと思っていた時、たまたま知り合いの紹介でシリコンバレーの起業家に会い、彼のビジネスに販売システムが欠けていることに気が付いたことが起業のきっかけです。

そして、これは面白そうだ、という衝動に駆られ、引退するのをやめてビジネスをスタートしたのです。

私も今の仕事をはじめたきっかけは、90%以上は偶然です。たまたまガーバーと会い、これはやらないといけない、という衝動に駆られてスタートし、いまに至っています。

なぜ、そのような衝動が起きたのかは、いまだに自分でも明確には説明できていません。

起業というのは、子供がスポーツ選手を見て、自分も将来スポーツ選手になりたい、と思うようなものであり、そこには、なぜやるか?というような論理的な説明などないのです。

 

(引用)ビジョンとは、感情を通して私たちに呼びかけるものであり、目的とは、ビジョンを論理的に整理したものなんだ。

→この文章は前文の続きの件です。

ここでいうビジョンが先ほどの衝動のようなものです。

”何をやるかより、なぜやるかが大事”

と言われていますが、実際には起業家の中では、”何をやるか?(WHAT)”が最初にきます。

サイモン・シネックという人物が書いた、名著「Whyからはじめよ」という本があります。

優れたリーダーは、まず、なぜそれをやるか?(WHY?)から伝える、というのが中心的なメッセージです。

これはいまの話と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、

起業家の頭の中にあるWHATを説明する手段がWHYなのです。

起業家が、これをやりたいという衝動(WHAT)は、他の人には理解できません。

他の人は起業家と同じ体験をしていませんし、衝動が起きるきっかけも体験していないからです。

だからこれをやりたい、とWHATだけを伝えても他の人には伝わりません。

だからWHYから始めなさい、ということなのです。

多くの経営者が経営理念の成文化に苦しむのは、彼らに理念や目的がないからではなく、単に、自分の中にある衝動を自分でも説明できないからなのです。

 

(引用)映画「ベスト・キッド」を覚えているだろうか?(中略)空手の達人は「ワックスをかけ磨く」ことと、空手をマスターすることの関係を知っていた。しかし、空手をマスターするために何が必要かを知るはずもない少年は、ワックスがけと空手に関係があるとは思ってもいない。経験不足からくる見習い段階でのいらだちは、様々な世界に共通するものであり、技術をマスターする前の段階で挫折してしまう。

→ガーバーは、ワールドクラスの会社を作る方法は技術であり、訓練によって身に付けることが出来る、と言っています。

その訓練の中には、一見すると理不尽で、ワールドクラスの会社を作ることとは関係がないように見えることも含まれています。

たとえば、昔、ガーバーがクライアントに対して組織図を作るように要請した時、ほとんどのクライアントは、会社を成長させるためになぜ組織図が必要なのか?を理解できなかったそうです。

本書の中では、ガーバーはワールドクラスの会社を作るためには、自己を深く見つめないといけないといけないと、サラに伝えます。

サラは最初はそれが会社を作ることと何の関係があるのかを理解できませんでしたが、徐々にその重要性に気が付いていきます。

昨年からスタートした私たちの月例勉強会、クラブGでも最初のテーマは、経営者の人生について考えることでした。

そのテーマにした理由は、いま述べた通り、優れた会社を作るためには、まず経営者が自分の人生に正面から向き合うことが必要だからです

中には、ビジネスの話をしにきているのに、なぜ自己啓発のような話をするんだ?と思われる方もいらしゃいましたが、後々、自分の人生に対する捉え方が、組織のすべてに影響することがわかってくるのです。

たとえば、経営者の価値観は企業文化に直結しており、経営者の人生計画は会社の長期計画に影響を及ぼし、経営者の思考の癖が、組織の弱みになったり、逆に強みになったりします。

本書に出てくるサラのように、ぜひ一度、ご自身の情熱は何なのか?人生の目的は何なのか?そして、それがどういまのビジネスに影響を与えているのかを見つめてみてください。

では、今回は以上となります。次回では、本書の後半部分、パート2に入ります。こちらも楽しみにしていてください。

清水直樹

清水直樹

一般財団法人日本アントレプレナー学会代表理事 大学卒業後、マイクロソフト日本法人に入社。その後独立し、海外不動産の紹介会社を起業した後、携帯電話普及の波に乗る形で、モバイルコマース事業の創業メンバーとして参加。上場を目指すが経営メンバー同士の空中分解によって頓挫。その後、海外の経営ノウハウをリサーチし続け、2011年に世界No.1のスモールビジネスの権威、マイケルE.ガーバーと出会う。同氏の日本におけるマスター・ライセンシーとなり、2013年には日本初のE-Myth社認定コーチ(E-Myth社はマイケルE.ガーバーが創った世界初の中小企業向けビジネスコーチング会社)になる。現在は、日本の中小企業がワールドクラスカンパニーになるための支援活動に力を注いでいる。