今日、盛和塾の機関誌94号を読み、新幹線の車内販売員である齋藤泉さんの凄絶な仕事ぶりに触れた。

彼女の一日の平均売上は20万円。これは通常の販売員の3倍から4倍という、驚異的な数字だ。新幹線という限られた空間、限られた時間の中で、なぜこれほどの差が生まれるのか。その裏側には、徹底した準備と、既存の枠組みを超えた行動力があった。

彼女は、自身のワゴンを単なる運搬具ではなく一つの「お店」と定義し、その日の天候や客層に合わせて商品の配置を微調整するために、出発前の1時間を準備に費やすという。さらに、不評だったすき焼き弁当を自ら試食し、改善案を携えて製造元の社長に直談判。「温泉卵を添える」という一工夫で、月間500個だった販売数を7,000個にまで跳ね上がらせた。最高売上を記録した日には、400席の車両で187食もの弁当を売り上げたという。

「受け身の仕事」という言い訳を捨て去る

この記事を読み、自分の甘さを痛感せざるを得なかった。

車内販売という仕事は、一見すれば「客が欲しければ買う」という受動的なビジネスに見える。しかし齋藤さんは、ワゴンという「店舗」の店主として、能動的に顧客の心理を読み、自ら商品を磨き上げ、購買の連鎖を作り出していた。

翻って自分はどうだろうか。私にとっての「ワゴン」とは、ウェブサイトであり、メールマガジンであり、顧客との最初の接点であるはずだ。それらを「一度作ったから」「いつも通りだから」と、ルーチンとして扱ってはいなかったか。齋藤さんが1時間をかけてワゴンを整えるように、私は自分の発信する一文字一文字、サイトの一ピクセルにまで、その日の顧客の状況を想像して魂を込めていただろうか。

また、既存のサービスに対する不満や「もっとこうなればいいのに」という違和感を、私は「仕方ないこと」として受け流してはいなかったか。顧客の不満の中にこそ、月間販売数を14倍に跳ね上げるような「商売の種」が眠っている。それを拾い上げ、製造元(あるいは開発現場)に直談判してでも変えていく。その執念こそが、プロフェッショナルとしての矜持なのだ。

顧客の「ため息」を「歓喜」に変換する法則

今回の学びから導き出した教訓は、「商売の境界線は、自分の情熱が引くものである」ということだ。

販売員だから売るだけ、という境界線を齋藤さんは自ら踏み越え、商品開発の領域にまで踏み込んだ。ビジネスにおいて「自分の管轄外」などという言葉は、情熱の欠如を正当化する詭弁に過ぎない。顧客が求めている結果を出すために、必要であればどこまででも動く。その「越境する情熱」こそが、圧倒的な数字の差を生む。

「店舗」の再定義と磨き上げ

明日から、自分のビジネスにおける「店舗」の定義を再構築する。

まずは、毎日発信しているメッセージやウェブサイトを、齋藤さんのワゴンのように「今日、この瞬間のお客様」に最適化されているか、厳しい目で見直す。

特に、顧客から寄せられる小さな不満や、自分自身が自社サービスに対して感じている「微かな違和感」を放置しない。それは、温泉卵一つで劇的に変わる弁当と同じ、爆発的な成長のヒントかもしれない。

「誰かがやってくれる」のを待つのではなく、自ら弁当屋の社長に会いに行くようなスピード感で、サービスの質を根底から変えていく行動を起こす。ワゴンを磨き上げる1時間の重みを、自分の日常に刻み込みたい。

投稿者 naokish

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