『致知』2026年2月号のもう一つの特集、松下幸之助と稲盛和夫についての対談を読み込んだ。 対談者は、稲盛氏の側近として京セラのアメーバ経営を支えた大田嘉仁氏と、松下幸之助の元で松下政経塾の設立に尽力した上甲晃氏。まさに両巨人の「懐刀(ふところがた)」による対話だ。

時を同じくして、日本では憲政史上初の女性総理、高市早苗氏が誕生し、高い支持率を得ている。彼女もまた松下政経塾の出身だ。誌面では、総裁選に挑む彼女に対し、上甲氏が送り続けたという「リーダーの心得」や、大田氏が選んだ「稲盛語録」、さらに上甲氏が選んだ「松下語録」が紹介されていた。

私が特に注目したのは、稲盛氏の代名詞である「アメーバ経営」が生まれた背景だ。 稲盛氏は「自分には松下幸之助さんのように、一万人もの組織を率いる才能はない」と自覚していた。だからこそ、組織を小集団に分け、自分がハンドリングできる「100人規模のリーダー」を育てることで、結果として巨大組織を動かす手法を編み出したという。

違和感・発見(Insight)

アメーバ経営とは、単なる管理会計のシステムだと思っていたが、その出発点は**「己の弱さの受容」**にあったのだという事実に、胸を突かれた。

松下幸之助という天才を仰ぎ見ながら、稲盛和夫という稀代の経営者でさえ「自分はあのレベルにはない」と悩み、そこから「凡人が天才の仕事を成し遂げるための仕組み」としてアメーバ経営を生み出した。 これは私自身にとっても大きな救いであり、同時に強烈な指針となる。私もまた、カリスマ的な牽引力で何千人を引っ張るタイプではない。ならば、組織を自分の「手のひらサイズ」にまで因数分解し、その小さな細胞一つひとつに魂を吹き込むやり方こそが、私の勝ち筋なのだ。

また、両氏の共通点として語られた**「真剣勝負」**の話も重い。 松下幸之助は「竹刀(しない)で試合をしている間は、まだまだ心に隙がある。人生は真剣勝負であり、切るか切られるかだ」と説き、稲盛氏もまた「ど真剣」であることを習慣としていた。 時代や手法は違えど、彼らの根底にあったのは、小手先のテクニックではなく「人間としての原理原則」と「異常なまでの当事者意識」だった。高市総理へのメッセージにある「天命」や「没我」という言葉も、すべてここから来ている。

教訓(Lesson)

経営とは、自分の器(うつわ)以上のことをしようと背伸びすることではない。自分の器のサイズを正しく知り、それを埋め尽くすほどの熱量で満たすことだ。

これを**「細胞分裂の法則」**と名付けたい。 巨大な岩(組織全体)を一度に動かそうとすれば腰を痛める。だが、それを砕いて手頃な石(小集団)にすれば、誰でも運べるようになる。 稲盛氏は、松下幸之助という巨岩をそのまま真似るのではなく、自分サイズに砕いて消化し、再構築した。 そして今、そのバトンは私の手元にある。私は松下・稲盛の両氏よりもさらに若く、経験も浅い。だからこそ、彼らの教えをさらに噛み砕き、自分の血肉として「深める」義務がある。

指針(Next Action)

今回紹介されていた珠玉の言葉たちを、単なる「名言集」として保存するのではなく、判断に迷った時の「羅針盤」として実装する。

具体的には、日々の業務で「妥協」や「逃げ」の心が芽生えた時、以下の問いを自分に投げかける。

  • 「今、私は竹刀で戦っていないか? 真剣を持っているか?」

  • 「私心はないか? 動機は善か?」

  • 「困難を愛の変形と捉えているか?」

松下・稲盛の哲学を、知識として知っているレベルから、無意識の判断基準(OS)になるまで刷り込む。まずは明日、現在抱えている最大の課題に対して、上甲氏が高市総理に送った言葉**「これは天の命じるところであり、その命じるがままに動いた。だから大丈夫」**という境地で向き合ってみる。


【備忘録】対談で紹介された珠玉の言葉(抜粋)

▼上甲氏から高市総理へ(リーダーの覚悟)

  1. 大事に臨んでは「神のごとき信念」を持て。さもなくば政治はふやける。

  2. 変化・大変はチャンス。「天下が乱れているからこそ、我が出る幕がある」。

  3. 成功するかは分からない。しかし「成功するという信念」に立てば、知らず知らず自分が変わる。

  4. これは天命である。小さな知恵で是非を考えるな。天の命じるままに動け。

▼大田氏が選ぶ「稲盛和夫の言葉」

  1. 「良きことを思う」のがすべての始まり。

  2. 困難は「愛の変形」である。

  3. 俺の辞書に「否定的」な言葉はない。

  4. 謙虚さは「魔除け」である。

▼上甲氏が選ぶ「松下幸之助の言葉」

  1. 人情の機微がわかれば天下が取れる。

  2. 弁説や知識より大切なのは「誠心誠意」。

  3. 心してみれば、万物ことごとく我が師となる。

  4. 人間は絶対に行き詰まらない。行き詰まったと考えるから行き詰まる。

投稿者 naokish

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