今日、盛和塾の『機関誌』91号を読み返した。2009年4月発行、リーマンショックという未曾有の経済危機の渦中で語られた稲盛和夫さんの講話だ。

稲盛さんは、エンロンやワールドコムの不祥事を受け、どれほど厳しい規制やルールを作っても、結局はまた同じような破綻が繰り返される現実を指摘していた。人類の歴史を紐解けば、結局のところ「悪いことをしようとする経営者」は後を絶たない。いくら外側をがんじがらめに縛っても、肝心の「経営者の心」が変わらなければ、本質的な解決には至らないのだ。この指摘は、2026年の今、改めて重く響く。

「無能なルール」が増殖するメカニズム

稲盛さんの言葉を反芻しながら、自分自身の組織運営についても内省した。不祥事やミスが起きた際、安易に「チェック機能を強化する」「新しいルールを作る」という選択をしてこなかったか。

ドラッカーが「法律の多い国の法律家は無能である」と喝破したように、ルールが増え続ける会社の社長もまた、無能と言わざるを得ない。例外的な事象に対応するためにルールを継ぎ足せば、網の目は複雑になり、誰も全体像を把握できなくなる。結果として、ルール破りが横行し、組織は窒息していくのだ。

ルールを増やすことで安心を得ようとするのは、経営者としての怠慢であり、本質から逃げているだけだ。ルールで縛ることは、相手の良心を信じることを放棄する行為に等しい。

価値観は「見えない手」として機能する

結局、ルールの数と価値観の共有度は反比例する。これが今回たどり着いた一つの法則だ。

組織内のコアバリュー(価値観)が細胞の隅々まで浸透していれば、いちいち細かい禁止事項を設ける必要はない。価値観という「北極星」さえ共有できていれば、各々が自律的に正しい判断を下せるからだ。

これを比喩で表すなら、「ルールはギプスであり、価値観は体幹」だ。怪我をした直後はギプス(ルール)で固定する必要があるかもしれない。しかし、いつまでもギプスに頼っていては、自らの筋肉(自律性)は衰えるばかりだ。本当に強い組織を作るためには、外側から縛るギプスを外し、内なる体幹を鍛え上げなければならない。

土俵の真ん中で「一本足打法」を捨てる

不況を乗り切る「5つの対策」についても、今の自分に引き寄せて考えた。幸い、2026年現在は深刻な不況下にはない。しかし、稲盛さんが常に説く「土俵の真ん中で相撲をとる」という教えに従えば、今この瞬間こそが次の危機への備え時である。

特に痛感したのは、コーチングという「一本足打法」の危うさだ。現在は効率よく回っているが、AI化が加速する今の時代、このままではマーケットに飽きられ、淘汰されるのは目に見えている。

また、「トップ自ら営業の最前線に出る」という教えも、今の自分には「現場の声を拾い、新商品の種を見つける」ことと同義だ。現在、私はファウンダーモードに入り、現場の細部にまで目を通しているが、この感覚こそが次の成長のエンジンになる。

認定コーチたちとの絆をより強固にし、単なる「ルールの共有者」ではなく「志の共鳴者」へと高めていくこと。そして、AI時代に即した次なる一手(新商品)を、現場の違和感の中から生み出していくこと。不況が来てから慌てるのではなく、凪の今だからこそ、私は自らの心と組織の体幹を鍛え直す。

投稿者 naokish

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